化粧品の権利侵害予防調査がなぜ重要か
特許調査には、技術動向調査、新規性調査、権利侵害予防調査、無効資料調査等の種類があります。化粧品では、特に権利侵害予防調査が大事であると考えます。
その理由は、販売される化粧品のパッケージの裏面を見るとわかるとおり、平成14年より、化粧品のキャリーオーバー成分及び香料の詳細を除く全成分を表示するルールと関係があります(化粧品の全成分表示ルール)。 |
特許権者が自身の特許を侵害されているか否か、化粧品パッケージの全成分表示を見れば一目瞭然です。
特許係争事件に発展した例として、知財高裁平28(ネ)10093号 スキンケア用化粧料事件が有名です(詳しくは→)。
この判決は、被告の化粧料製品は原告の特許の技術的範囲に属すると認定されながら、特許発明は進歩性を有しないので特許無効であるとして、原告の請求を棄却したものです。
被告製品の有効成分であるアスタキサンチンの特許を、以下の条件で検索してみました。
検索論理式=4C083(AD53.1+AD62.1)*アスタキサンチン/TX
検索期間=発売日の2014.3.6以前に公知
特許になったものが115件ヒットしました。その中には、被告製品を権利範囲に含む原告の特許もありました。
上記の特許検索を、被告製品の発売された2014年当時に無料で行おうとすると、工業所有権情報・研修館(INPIT)の検索端末を利用する必要がありました。現在は、自身のパソコンでJ-PlatPatに行けば、特許調査を手軽に行うことができます。
特許調査を内部で行うにしても外部に依頼するとしても、その費用対効果を考えがちになります。しかし、ひとたび特許係争に発展すると、原告・被告の時間的、精神的な労苦や訴訟に関係する経費は、きわめて甚大です。
転ばぬ先の杖として、特許の権利侵害予防調査が大事であるといえます。
化粧品の種類と特許調査の難易度
化粧品の種類にはいろいろあります。経験上、以下のように、企画成分のように配合成分の効能がはっきりしているものが比較的調査し易く、一方、汎用配合成分の組み合わせに特徴のあるものは、調査対象が広がり易く、比較的難しい感を受けます。
特許調査し易いもの | 特許調査し難いもの | |
皮膚用化粧品 | 化粧液、クリーム、乳液、 日焼け・日焼け止め用化粧料、 メイキャップ用化粧品 | 洗浄料(クレンジング、ボディシャンプー)、ボディリンス、 シェービングクリーム |
頭髪用化粧品 | 養毛料、頭皮料 | 整髪料、 毛髪着色料、 洗髪料、ヘアリンス |
その他 | 香水、 爪化粧料、 リップアップ化粧料、 口腔化粧料 |
機能性化粧品の特許調査
種々の化粧品の中には、機能性化粧品とうたうものがあります。機能性化粧品の名称は、法定ではありませんが、一般にエイジングやストレスのような内部的要因、紫外線、気候のような外部的要因によって肌質や毛質がダメージやトラブルを受けるのを解消、改善又は防止することをうたった化粧品をいいます。特に、スキンケア、メイキャップ、ボディケア、ヘアケア等のために多くの機能性化粧品が開発されています。
現在、販売されている化粧品は、何かしらの機能性がうたわれているのではないでしょうか。特許出願又は特許される化粧品の多くが、機能性化粧品であり、このサイトが主に扱う対象もまた機能性化粧品です。
機能性化粧品の主な機能とそれが発現するメカニズムを、以下にまとめます。
機能性 | 美白 | 抗老化 | 抗炎症 |
作用機序 | メラニン生成抑制 メラニン蓄積抑制 メラニン分解 ターンオーバー促進 | コラーゲン産生 ヒアルロン酸産生 エラスチン保護 真皮代謝 メディエーター抑制 抗酸化 細胞賦活化 | 保湿 角化正常化 細胞内ROS生成抑制 抗菌 |
上記機能を発現するための手段は、通常、機能発現成分(例えば、植物エキス)の選定が主ですが、副成分との組み合わせで、機能発現成分の安定化や相乗効果が現れることがあります。
また、機能発現成分の修飾や表面処理、基剤や副剤の組合せ、乳化剤や乳化方法等によっては、化粧料の安定化、使用感の改善といった上記以外の効果が出てくるかもしれません。
化粧品に配合可能な成分は、化粧品基準に定められていますが、公知の成分であっても、他の配合成分との組み合わせによって、相乗効果や意外な効果を奏する場合、発明としての価値が生まれ、特許化の可能性があります。
テキスト検索の限界と複合検索のススメ
~フリーワード検索から一歩進んだ検索テクニックを取得する~
JPlat-Patを用いる際、一般に、検索対象を特許請求の範囲や要約とし、検索したい成分のフリーワードを入れてテキスト検索することが、感覚的にとっつき易いです。
フリーワードを用いたテキスト検索は、一次検索には役に立ちますが、検索に慣れてくると、以下のような問題や疑念を生じることでしょう。
・ノイズを減らしたい
・検索漏れが気になる
・検索対象を有効的に絞りたい
化粧品に配合される成分が効能成分の場合、成分を特許請求の範囲に指定して、そのテキスト検索を行っても、検索漏れの心配は少ないかもしれません。
一方、乳化剤のように異表記や上位概念が相当考えられる場合、検索対象を特許請求の範囲に指定して、そのテキスト検索を行うと、検索漏れの心配が大いに生じます。
乳化剤の一種である「ジラウロイルグルタミン酸リシンNa」の特許検索例に、テキスト検索の問題を説明介します。
この化合物は、右の化学構造式に示されるように、ラウリン酸とグルタミン酸との縮合物同志をリシンを介して縮合連結した構造を有しています。 この化合物は、陰イオン性界面活性剤の一種として、化粧品に毛髪ケア、スキンケア等の機能を付加する成分として配合されます。 |
この化合物の権利侵害予防調査で、フリーワードに「ジラウロイルグルタミン酸リシンNa」を指定したテキスト検索を行うと、検索数は非常に限られてしまいます。
特許請求の範囲に実際に記載された「ジラウロイルグルタミン酸リシンNa」の異表記の例は、
アミノ酸系界面活性剤、ジェミニ型界面活性剤、アミノ酸系2鎖3親水基型界面活性剤、アシル化アミノ酸、アシルグルタミン酸塩、アシル基含有アミノ酸誘導体、N-アシルアミノ酸縮合物、N-アシルアミノ酸ジエステル、N-長鎖アシルグルタミン酸塩、N-アシルアミノ酸塩系界面活性剤、ジアシルグルタミン酸リシン塩、ジラウロイルグルタミン酸リシン塩・・・
と非常に多様です。
特許請求の範囲の記載にこれほど多くのゆらぎが生じる理由は、
・出願人は、実際に使用した化合物(点)よりも広い権利化(面)を目指して上位概念を作ろうとする、
・出願人には、特許出願審査になるべく引っかからないよう抽象化したいという心理が働く
ためです。
いずれにしても、上位概念語、下位概念語、同義語、類義語等が多数存在する場合、テキスト検索のみの手段によって漏れの無い検索を行うことは、実際、ほとんど不可能です。
ノイズと漏れの少ない検索を行うためには、化粧品成分の
・FI(ファイルインデックス)やFタームといった特許分類を用いるインデックス検索と
・キーワードを用いるテキスト検索
を組み合わせる複合検索が有益です。
ここで、インデックス検索が主役であり、テキスト検索がそれを補助する脇役といえます。
テキスト検索は基本的に有効なインデックスがないときに行うという意見も聞かれますが、化粧品特許調査の場合は、化粧品成分のインデックス検索と一般名等でのテキスト検索とを組み合わせることで、ノイズと漏れの両方を抑えるような検索が可能になると考えます。
化粧品を特許検索するためのテーマコードはどこに
機能性食品や健康食品には、それらを総括するようなFタームが存在しませんが、
化粧品には、以下の示す統合化されたテーマコードが存在します。J-PlatPatのPMGSに下記のテーマコードを入力すると、内容を見ることができます。
テーマコード | |
FI(ファイルインデックス) | A61K8(化粧用製剤) A61Q(化粧品の特殊な使用) |
Fターム | 4C083(化粧料) |
FIは、日本特有の技術分野における特許文献を分類できるように、IPCをさらに細分化したものですが、化粧品分野のFIとIPCはほとんど一緒のため、IPCとFIの区別にこだわる必要はありません。
化粧料のFIを細分化していない理由は、特許庁の審査がFタームに重点をおいているためと予想します。
それでも、FIやIPCを付与することがないがしろにされているわけではなく、日本で出願された発明を外国特許庁への情報提供するために貢献し、それは翻って自分たちの外国特許調査に役立つと考えます。
主だった化粧料のFIを以下に示します。
カテゴリー | 目的 | 製品の種類 | FI |
スキンケア剤 | 整肌・保護 | 化粧水、乳液、クリーム、パック | A61Q19/00 |
美白 | クリーム | A61Q19/02 | |
アンチエイジング | クリーム | A61Q19/08 | |
洗浄 | ボディシャンプー | A61Q19/10 | |
浴用 | 入浴剤 | ||
紫外線防御剤 | 日焼け止めクリーム | A61Q17/04 | |
制汗・防臭剤 | デオドラントスプレー | A61Q15/00 |
Fタームは、下に示すように多面的な観点で分類されています。
観点 | 観点の特徴 | 例 | Fタームの抽出箇所 | FIによる補完 | |
成分 | AA | 天然系成分、構造/組成不明な成分 | 植物エキス、ロウ、はちみつ、プラセンタエキス | 請求項及び実施例 | A61K8 |
AB | 無機系成分 | 無機酸、チタン化合物、リン酸塩、ケイ酸塩 | |||
AC | 元素が特徴の有機系成分 | 炭化水素、複素環化合物、酸素・窒素・硫黄・ハロゲン・リン・ケイ素・金属含有化合物 | |||
AD | 構造が特徴の誘起性成分 | ポリマー、糖類、タンパク質、リン脂質、ビタミン | |||
BB | 機能特定成分 | 界面活性剤、油剤、酸・塩基、キレート剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、皮膚に機能を付与する剤(美白剤、保湿剤) | 請求項のみ | – | |
CC | 製品の種類・用途 | 皮膚用化粧料(化粧水、乳液)、浴用剤、育毛剤 | 請求項及び実施例 | A61Q | |
DD | 製品の形態・形状 | エアゾール、乳化系、ゲル・ゾル | 請求項及び実施例 | – | |
EE | 製品の効果・機能 | 美白、抗老化、コンディショニング | 請求項、実施例、発明の詳細な説明 | – | |
FF | 製造方法・装置 | 滅菌 | 請求項及び実施例 | – |
Fタームの構造的観点(AA~AD)と製品の用途の観点(CC)は、FIにも存在しますが、その他はFターム独自といえます。
Fタームの詳細な分類と解説は、PMGSのテーマコード4C083から参照できます。
特許調査したい化粧品成分の特許調査を行いたい場合、その成分の化学構造に関するFタームが、4C083の構造に基づく技術的観点AA〇〇~AD〇〇のどこに属するのかを知りたいところです。
有料データベースには、FタームやFIを詳細に調べる機能があるかもしれませんが、当サイトは、誰でも無料でアクセスできるJ-PlatPatデータベースにこだわります。
J-PlatPatにもFタームを調べる方法がいくつかあります。
最も安易な方法は、J-PlatPatのPMGSにて、下図のようにキーワード検索することです。下図は、グリセリンを検索した結果です。
ただし、PMGSのキーワード検索には例示が少ないため、ヒット率はそう高くありません。したがって、検索したい化粧品成分をテキスト検索して、参考となる特許公報をいくつか入手し、それらの出願情報から該当するFタームをこまめに拾い集めるしかないようです。
化粧品の特許調査では、特に化粧品成分の化学構造に基づいたFタームの収集が重要です。化粧品成分の構造に基づくFタームのデータベース化が必須です。
化粧品特有のFターム付加コードとは
化粧品のテーマコードでは、Fタームのうちの成分の構造に関する観点AA~ADに、さらに情報を付け加えるための付加コードが設けられています。
化粧品の付加コードのルールは、以下の3種類です。
付加コード | 例 | 内容 |
.1 | AA01.1 | FTを特許請求の範囲から抽出 |
.2 | AA01.2 | FTを実施例から抽出 |
. | AA01. | FTを特許請求の範囲及び実施例から抽出 |
3種類の付加コードは、権利侵害予防調査、無効資料調査といった調査内容に応じて使い分けますが、付加コードの有無によって、検索数や検索効率が大きく変わります。
化粧品成分の構造に基づくFタームを用いる特許検索の重要性
「ジラウロイルグルタミン酸リシンNa」の権利侵害予防調査をするための検索論理式の一例を、以下に示します。
検索式=4C083AC66.1/FT*{ジラウロイル,グルタミン,リシン},3N/TX
上記式での過去20年間の検索数は103件でした。特許リストの一部を下に示すとともに、ジラウロイルグルタミン酸リシンNaに相当する用語を赤くマーキングしました。ジラウロイルグルタミン酸リシンNaがさまざまに変更されても、充分検索されていることがリストからわかります。
Fタームの構造以外の技術的観点の使用
は、化粧品のFIにはないFターム特有の観点が多数あります。
化粧品の成分に構造に関する観点(AA~AD)は、特許出願された発明に必ずといってよいほどタグ付けされますが、成分以外の観点が、公開公報の発明にタグ付けされるか否かは、下記の判断に基づきます。
観点 | 内容 | 技術的観点として抽出される場合 |
BB | 機能特定成分 | 特許請求の範囲に、機能で特定された化粧料成分(固形油、陰イオン界面活性剤等)や化粧料自体(チロシナーゼ阻害剤、しわ改善剤等)が書かれている。 |
CC | 化粧品の種類・用途 | 特許請求の範囲や実施例に、化粧品の種類(皮膚用化粧料等)が書かれている。 |
DD | 化粧品の形態・形状 | 特許請求の範囲や実施例に、化粧品の形態(乳化系、ゲル等)が書かれている。 |
EE | 効果 | 発明の名称、特許請求の範囲、発明の詳細な説明、実施例等から判断して、効果が発明の特徴に大きく関与する。 例えば、発明の名称が美白化粧料なら、美白のFターム:EE16が付与される。 |
公開された発明に上記観点がタグ付けされているのに、検索外注報告書をいろいろ見ていると、構造に関する観点(AA~AD)以外の観点の検索式への使用頻度はそう高くありません。
また、化粧品の効能成分の調査では、CC(種類・用途)やDD(形状・形態)でむやみに限定すると、これらの限定のない特許文献を見逃す恐れもあります。
一方で、これらの観点をうまく使えば、メリハリの効いた権利侵害予防調査が可能になるといえます。
BB~EEのいずれの観点が調査に有効か否かは、化粧品成分の属性や機能とそれが配合される化粧品自体とによって変わります。
化粧品の汎用性成分は、特許請求の範囲にその名称を用いないで記載されることがよくあります。この場合、BBやCC~EEをうまくかけ合わせて、関連発明を抽出する必要が出てきます。
化粧品成分が皮膚化粧品に用いるものであれば、化粧品の種類を皮膚用(CC02)に限定し、毛髪用化粧品に用いるものであれば、化粧品の種類を毛髪用(CC31)に限定することがあります。
化粧品成分の権利侵害調査に使用する検索式の例を、当所の行う特許調査の特長に記載していますので、ご参照ください。
J-PlatPatを用いた化粧品の外国特許調査
化粧品の外国特許調査を特許調査会社に依頼した際に、化粧品成分の異表記を特許請求の範囲に羅列する検索式を提示されて、調査件数が膨大になった経験はないでしょうか。特許調査会社は有料のデータベースを備えていますが、全ての技術分野においてきめの細かな検索条件を検討できるわけではないのです。
J-PlatPatでも、主要国の化粧品の権利侵害予防調査を行えます。
J-PlatPatは、
無料でありながら、
高度なテーラーメード検索条件やオプションの設定が可能であり、
検索結果の書誌情報(要約なし)をCSV出力でき、
検索論理式を保存して、後日の再検索によるフォローアップできる
等の特色を有するため、有料データベースと遜色のないデータベースといえます。
J-PlatPatで外国特許調査する際、ノイズと漏れの両方を抑えた検索のために、インデックス検索とテキスト検索を組み合わせが有効です。
化粧品の主要国の特許調査をJ-PlatPatで行うポイントは、下表に示す構造タグの活用です。
国又は地域 | インデックス検索用 の構造タグ | テキストと構造タグ | |
米国(US) | IP又はIP | × | TI,AB,CL,SP,TX等の英文 又は ABの和文 |
欧州(EP) | |||
中国(CN) | TI,AB,CL,SP,TX等の機械翻訳和文 又は ABの和文 | ||
韓国(KR) |
外国特許庁のデータベースには、日本審査に使用されるFタームやFIは存在しませんが、それに変わるインデックスとしてCPC(構造タグはCP)があります。CPCは、FタームAA~ADと比べると粗いですが、IPやFIよりも詳しい場合があります。
IP及びCPは、
A61K8/〇〇(Fタームの構造的観点AA~ADに相当)、
A61Q〇/〇〇(Fタームの用途の観点CCに相当)
のインデックスが有用です。
IPやCPのインデックス検索と配合成分のテキスト検索とを用いると、けっこう有意義な特許調査が可能です。
では、J-PlatPatを用いた韓国・中国特許調査を以下に説明します。
特許調査には、JーPlatPatの特許・実用新案検索>論理式入力>テキスト検索対象:和文を用います。機械翻訳文といえども、有効な和文テキスト検索が充分可能です。
以下は、化粧品成分「セラミド」の韓国権利侵害予防調査の検索式の例です。
検索式=A61K8/68/CP*セラミド/TX
検索式に、国名は反映されませんので、論理式入力時に韓国(KR)を指定してください
次に、J-PlatPatを用いた米国・欧州特許調査を以下に説明します。
特許調査には、
JーPlatPatの特許・実用新案検索>論理式入力>テキスト検索対象:英文
を用います。
J-PlatPatの米国(US)及び欧州(EPO)に対する特許情報(和文)には、AB(要約)しかありません。対象をABよりも拡げてテキスト検索したいところです。そこで、テキスト検索対象に英文を用います。検索式が英語になるため、英文検索時のルールの理解が必要です。
以下は、化粧品成分セラミドの米国権利侵害予防調査の検索式の例です。
検索式=A61K8/68/CP*ceramide/TX
検索式に、国名は反映されませんので、論理式入力時にアメリカ(US)を指定してください
権利侵害予防調査で(擬)侵害特許が見つかった場合
すでに販売している製品やこれから販売しようとする製品の権利侵害予防調査で、特許を文言侵害していたり、侵害が疑われるような先行特許や出願が見つかった場合には、以下の順序で検討を行います。
以下の順序は、検討作業量や実行難易度の軽い順になっています。
(1)権利一体の原則の再確認
権利一体の原則とは、特許請求の範囲の全ての構成要件を充足する実施行為のみが当該特許請求の範囲を充足し、特許侵害となるという考え方です。例えば、
特許発明は企画製品に配合されない必須成分がある
特許発明は配合量が限定されているところ、その範囲に企画製品が入らない
といったように、企画製品が特許発明の実施行為に該当するか否か、該当する場合には組成変更によって実施行為に該当しないようにできないかを検討します。
(2)侵害論の有無を検討
侵害論は、特に、
出願経過を参酌した特許発明の限定解釈
作用効果を参酌した特許発明の限定解釈
実施例を参酌した特許発明の限定解釈
が可能かどうかを検討します。
何等かの侵害論の成立によって、企画製品が限定された特許発明の権利の範囲外となるようにします。
(3)無効論の有無を検討
無効資料調査によって特許を無効にする先行技術文献が見つかれば、企画製品の特許侵害を訴求することは権利濫用となり認められません。
特許法第104条の3:特許権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者は相手方に対しその権利を行使することができない。
(4)企画製品の中断/中止
特許出願が審査前・中の場合は、出願審査経過をウォッチしながら、特許出願の帰趨(未審査請求や拒絶査定)が明確になるまで企画製品の開発等を中断します。
ただし、特許出願の特許性が明らかに否定できる(例えば先行技術文献が存在する)ものであれば、企画製品の続行もあり得ます。
特許の存続期間満了が迫っている場合は、企画製品の一時中断の可能性を検討します。
可能であれば、ラインセンシングを検討します。
検索論理式の作成方法については、J-PlatPatを用いる特許調査方法をご参照ください。
化粧品の特許調査をもっと詳しく知りたい場合は、当事務所のセミナー受講をご検討ください(特許調査と特許戦略のセミナー→)。
当所の特許調査部門では、化粧品に関する各種特許調査を行っています。手っ取り早く特許調査を行いたい方は、ぜひ、当事務所の調査部門をご活用ください(特許事務所が行う特許調査→)
Patent, Reseach and Consulting のNakajima IP Office |