機能性食品の特許調査方法

機能性表示食品の登録前に権利侵害予防調査をしておく理由

特許調査には、技術動向調査、新規性調査、権利侵害予防調査、無効資料調査等の種類がありますが、機能性表示食品の登録前に権利侵害予防調査をしておくことが大事と考えます。

その理由は、サプリメントの形態の機能性表示食品のパッケージには、機能性関与成分が明記されることと関係します。パッケージを見れば、特許侵害か否か一目瞭然です。したがって、既知の機能性関与成分を用いて、機能性食品市場に後かから参入する場合には、その成分に特許権が存在していないかを確認する必要があります。

機能性関与成分に特許権が存在しなくても、機能性関与成分と配合するその他の成分との組み合わせによって相乗効果や意外な効果を奏する場合、特許が取られている可能性があります。

複合検索のススメ
~テキスト検索から一歩進んだ検索テクニックを取得する~

機能性表示食品に配合する機能性関与成分の数は、通常、1~5個くらいなので、各成分について個別に特許調査することはそれほど困難なことではないでしょう。

その場合、JPlat-Patを用いて、検索対象を特許請求の範囲や要約とし、機能性関与成分のキーワードを入れてテキスト検索することが、感覚的にとっつき易いです。

キーワードのみの検索は、一次検索には便利ですが、検索に慣れてくると、以下のような問題や疑念を生じます。

・ノイズを減らしたい
・検索漏れが気になる
・検索対象を有効的に絞りたい

例えばルテインやアスタキサンチンのような眼の健康をヘルスベネフィットとする機能性表示食品の特許調査を行う場合のテキスト検索の問題を以下に説明します。

まず、眼の健康の機能性に基づく用途は、以下のような異表記;
眼科・眼疾患・眼病の治療用、眼機能障害を治療・寛解・予防用、視機能・眼視野・眼ピント調節機能改善用、眼の老化防止用、眼性疲労防止用、目の充血・ドライアイ改善用、涙液量低下抑制用、網膜障害予防用、網膜・網膜神経細胞保護用・・・
が可能です。

これらの異表記を網羅するテキスト検索は、実務上、かなり困難なことです。

一方、ルテインやアスタキサンチンの異表記は、そう多くないので、異表記を充分に反映したテキスト検索であれば、漏れはそれほど気になりません。ただし、特許請求の範囲がルテインやアスタキサンチンの上位概念(例えばキサントフィルやカロテノイド)で記載されている場合に検索漏れが出てきます。

上記の問題や疑念に解決する方法は、

・FIやFタームといった特許分類を用いたインデックス検索
・キーワードを用いたテキスト検索

を有機的に組み合わせることです。
インデックス検索が主役であり、テキスト検索がそれを補助する脇役といえます。

機能性表示食品の特許分類はどこに?

残念ながら、機能性表示食品を統合的にまとめた特許分類は存在しません。その理由は、機能性表示食品の特許調査で説明したように、機能性表示食品と医薬とは明確に区別されますが、特許の世界ではそのような垣根がないからです。簡単に言うと、特許を取ろうとする者は、機能性関与成分の効果を治療~改善~予防に渡って広い権利化を目指します。

特許庁の審査基準の運用もまた、機能性表示食品をはじめとする保健機能食品を対象とした審査分類として、「栄養の改善」を対象とするIPC・FIのA23L33とFタームの4B018に一部存在する他は、機能性表示食品に特別なテーマコードを用意していません。

一方で、機能性表示食品の用途特許は、「医薬」、「治療」及び「栄養の改善」といった特許分類と重複し易いことから、以下のような特許分類(FIやFターム)を優先することが有効的といえます。

機能性表示食品を検索するためのインデックス

化学構造の観点のインデックス機能の観点のインデックス
FI医薬製剤:A61K△△/〇〇治療:A61P△△/〇〇
栄養改善:A23L33/〇〇
Fターム有機物:4C206BA~JB〇〇
他の有機物・無機物:4C086BA~HA〇〇
動物・微生物:4C087BA~CA〇〇
蛋白質:4C084BA~DC〇〇
植物: 4C088AB~BA〇〇
用途:4C206ZA~ZC〇〇
用途:4C086ZA~ZC〇〇
用途:4C087ZA~ZC〇〇
用途:4C084ZA~ZC〇〇
用途:4C088ZA~ZC〇〇
栄養改善:4B018MD〇〇栄養改善の用途:4B018ME〇〇

上表の5色のFI/Fタームと、それらが属する7個のインデックスとを組み合せて、機能性表示食品に直結するような検索論理式を作成します。

検索式の作成例を、当所の行う特許調査の特長でいくつか紹介しています。

J-PlatPatを用いて機能性食品の外国特許調査を行う

機能性食品の外国特許調査を特許調査会社に依頼すると、特許請求の範囲に機能性関与成分の異表記を羅列するだけの検索論理式を提示されて、要調査件数が膨大になった経験はないでしょうか。特許調査会社は有料のデータベースを備えていますが、主要国や技術分野に応じてきめの細かな検索条件を検討するわけではないのです。

J-PlatPatを用いて、機能性食品の権利侵害予防調査を充分に行うことできます。
J-PlatPatは、
無料でありながら、
高度なテーラーメード検索条件やオプションの設定が可能であり、
検索結果の書誌情報(要約なし)をCSV出力でき、
検索論理式を保存して、後日の再検索によるフォローアップできる
等、有料データベースと遜色のない機能を備えています。

J-PlatPatを用いた外国特許調査で、ノイズ及び漏れの少ない効率的な検索を行うために、インデックス検索とテキスト検索を組み合わせた複合検索が有効です。

機能性食品の主要国の特許調査をJ-PlatPatで行うポイントは、以下の構造タグの活用です。

国又は地域インデックス検索用
の構造タグ
テキスト検索用の構造タグ
米国(US)CP×TI,AB,CL,SP,TX等の英文
ABの和文抄録
欧州(EP)
中国(CN)TI,AB,CL,SP,TX等の機械翻訳文
ABの和文抄録
韓国(KR)

外国特許庁のデータベースには、日本審査に使用されるFタームやFIは存在しませんが、FIに変わるインデックスとしてCPC(構造タグはCP)が有用です。CPCは、Fタームと比べると粗いですが、FIよりも詳しい場合があります。

まず、J-PlatPatを用いた韓国・中国特許調査を以下に説明します。

特許調査には、JーPlatPatの特許・実用新案検索>論理式入力>テキスト検索対象:和文を用います。機械翻訳文といえども、有効な和文テキスト検索が充分に可能です。

以下は、「免疫調節の機能性に関与するプロポリス」の中国権利侵害予防調査の検索式の例です。

検索式=A61K35/644/CP*プロポリス/TX*A61P37/02/CP

検索式に、国名は反映されませんので、論理式入力時に中国(CN)を指定してください。

次に、J-PlatPatを用いた米国・欧州特許調査を以下に説明します。

特許調査には、JーPlatPatの特許・実用新案検索>論理式入力>テキスト検索対象:英文を用います。

J-PlatPatの米国(US)及び欧州(EPO)に対する特許情報(和文)には、AB(要約)しかありません。検索対象をABよりも拡げてテキスト検索したいところです。そこで、テキスト検索対象に英文を用います。検索式が英語になるため、英文検索時のルールの理解が必要です。

以下は、「免疫調節の機能性に関与するプロポリス」の欧州権利侵害予防調査の検索式の例です。

検索式=A61K35/644/CP*propolis/TX*A61P37/02/CP

検索式に、国名は反映されませんので、論理式入力時にEPO(EP)を指定してください。

 企画製品の権利侵害予防調査で、特許侵害が疑われる先行特許や出願が見つかった場合、以下の順序で検討を行います。順序は、検討作業量や実行難易度の軽い順になっています。

(1)権利一体の原則の再確認

 権利一体の原則とは、特許請求の範囲の全ての構成要件を充足する実施行為のみが当該特許請求の範囲を充足し、特許侵害となるという考え方である。例えば、

 特許発明は企画製品に配合されない必須成分がある

 特許発明は配合量が限定されているところ、その範囲に企画製品が入らない

といったように、企画製品が特許発明の実施行為に該当するか否か、該当する場合には組成変更によって実施行為に該当しないようにできないかを検討する。

(2)侵害論の有無を検討する。

  侵害論は、特に、

 出願経過を参酌した特許発明の限定解釈

 作用効果を参酌した特許発明の限定解釈

 実施例を参酌した特許発明の限定解釈

が可能かどうかを検討する。
 何等かの侵害論の成立によって、企画品が限定された特許発明の権利外となるようにする。

(3)無効論の有無を検討する

 無効資料調査によって特許を無効にする先行技術文献が見つかれば、企画製品の特許侵害を訴求することは、権利濫用であって認められない。

特許法第104条の3:特許権の侵害に係る訴訟において、当該特許が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるときは、特許権者は相手方に対しその権利を行使することができない。

(4)企画製品の中断/中止

 特許出願が審査前・中の場合は、出願審査経過をウォッチしながら、特許出願の帰趨(未審査請求や拒絶査定)が明確になるまで企画製品の開発等を中断する。
ただし、特許出願の特許性が明らかに否定できる(例えば先行技術文献が存在する)ものであれば、企画製品の続行もあり得る。

 特許の存続期間満了が迫っている場合は、企画製品の中断の可能性を検討する。

 可能であれば、ラインセンシングも検討する。

検索式の作成のしかたについては、J-PlatPatを用いる特許調査方法をご参照ください。

当所の特許セミナーでは、機能性表示食品の特許調査と特許戦略を平易かつ詳しく解説しますので、興味のある方は受講をご検討ください(特許調査と特許戦略セミナー→)。

当所の特許調査部門では、機能性表示食品に関する各種の特許調査を行っています。手っ取り早く特許調査を行いたい方は、ぜひ、当事務所の調査部門をご活用ください(特許事務所が行う特許調査→)。

Patent, Reseach and Consulting のNakajima IP Office
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